熱心なほうの市役所職員

30歳で市役所職員に転職。ちょっとずつ面白くなってきたかもしれない。

観光振興のためのお金をどう稼ぐか

(公財)日本交通公社『観光文化』238号 (2018年7月発行)  テーマ「インバウンド時代の観光振興財源」を読んだ記録です。

 

問題提起

観光客に来てもらうため地域全体での魅力向上が大切。そのために日本版DMO (Destination Management/Marketing Organization) が各地で立ち上がっているけど、じゃあその財源をどうやって確保する?

 

現状

国からの補助金や委託金に依存しているが、使途の限定や持続性という点でDMOの財源には適さない。

  • DMOは各地域の現状に合わせて自由に使える財源が必要
  • マーケティングや人材育成などに中長期的な財源が必要

 

財源の主な選択肢

  1. 入湯税の超過課税
  2. 法定外税(宿泊税等)
  3. 分担金
  4. その他(協力金、寄付金)

 

1. 入湯税の超過課税

標準的に課される入湯税(150円)よりも高い税率を課し、超過分を観光振興財源に充てる。

 

  • 利点: すでにある税金制度を利用するため比較的導入が容易て徴税コストも低い
  • 欠点: 温泉資源が乏しい地域では導入できない、温泉のない民泊等の施設では徴収すさできず公平性に欠ける

 

2. 法定外税(宿泊税等)

宿泊数や宿泊料金に応じて課税する宿泊税(東京都、大阪府京都市金沢市で導入)や、離島の入域税などを地域独自に導入する。

 

  • 利点: 税目・税率を地域が独自に設定できるため地域の特性に合った制度設計が可能
  • 欠点: 法定外税導入にあたり国税や他の地方税とバッティングしないかの検討が必要

 

3. 分担金

特定事業の経費に充てるため、その受益者から受益の程度で徴収する。

例: 景観整備のための修理・修景事業にあたり、建物の所有者(受益者)が一定額を負担する。

※ 受益者の範囲、受益の程度を明確に評価して合意形成する必要がある。

 

4. その他(協力金、寄付金)

その他、入山者やダイバーから任意で「協力金」を徴収する方法や、ふるさと納税制度を活用した「寄付金」を集める方法もある。

 

  • 利点: 条例の制定が不要で比較的導入しやすい。
  • 欠点: 強制力がないため安定性に欠ける。

 

補足(関連ニュース)

この雑誌を読んでいるときちょうど下のニュースを目にしました。京都市金沢市も今年に入って宿泊税導入の条例が可決されたそうですので、いわゆる観光地での導入が今後相次ぎそうですね。

熱海市長「宿泊税」検討 4選目指し公約に|静岡新聞アットエス (2018/08/02)

斉藤市長は「観光地は常に投資をしていくのが宿命」とした上で、人口減による税収減や社会保障費の増加が見込まれる中、財源の強化を図るため、観光目的に特化した税の必要性を強調した。使途については、各地区の要望を踏まえたハード整備、官民による観光まちづくり組織「熱海版DMO」の費用に充てるとした。

なお、同誌によると熱海市はすでに法定外税である「別荘等所有税」を導入しており、5億円(平成27年度)の税収があるそうです。

 

まとめ

観光振興にかかる経費を補助金以外でどう賄うか、という課題に対し、入湯税超過課税や宿泊税といった独自の財源の確保が必要という内容でした。

私の住む地域にもDMOがあり、現状はやはり国や自治体の補助金や委託金等で活動しているようです。観光客は日帰りが多く、温泉資源や宿泊滞在者が多くないため、入湯税超過課税や宿泊税を導入してもそれほどの収入にならないように思えます。

京都市熱海市などの一大観光地ではないため宿泊税や入湯税には頼れないという同じような地域は多いのではないでしょうか。

 

例えば、山梨県富士河口湖町では河口湖での遊漁行為に対して1日1人200円の遊漁税を課しています。岐阜県では乗鞍環境保全税として特定の駐車場利用者から徴税しています。

 

各地域の強みを活かし、地域の現状に合わせた独創的な財源を考える必要がありそうです。